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JR TOWER

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【JR TOWER Short Story Vol.01】 「ハッキョイ!」 / 作: 朝倉かすみ PROFILE FLASH版HTML版 TOPへ戻る

親もだめだった。父は「そりゃまた景気のいいあだ名だな」と爆笑したきりだったし、母は「いじめにつながらなきゃいいけど」と眉間にしわを入れ、嘆息した。親の反応はいつだって軽すぎるか深刻すぎるかのどちらかで、丁度、というケースはめったにない。
「みんな、全然だめなんだ」
 と、つぶやいたら、
「千草がだめじゃないと思うものなんてあるの?」
 かたわらで麻理子さんが切れのいい笑い声を立てた。T38にいる。映画を観た帰りに寄った。麻理子さんは千草の母の妹だ。二十六歳。小さな出版社に勤めていて、ラーメンや温泉案内の本を作っている。千草とは仲がよかった。なんとなく馬が合う。
「だめじゃないものだってあるよ」
 大きな窓から下界を眺め、千草は風船をふくらませるようにして息を吐いた。たとえば、池谷功喜くんとか。
 
 下校時、千草は派出所の前で足を止め、掲示板を見る。おたずね者の顔写真の下に、行方不明者捜索の張り紙が貼ってある。
 池谷くんは、二月八日にすがたを消したらしかった。千草より二歳年上の当時中二だ。

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