それなら何が物足りないのかって首をひねってみるけど、答えは見つからない。だけど、こころに霧がかかる。その霧が深くなり、足元さえ見えなくなるときがある。
三日ほど前、同期入社のカナコを食事に誘った。今は違うが、去年まで同じ支店だった。何度かいったことのあるイタリアンレストランで待ち合わせた。お互いの近況や行員の噂などを話したあとで、ユリは今の気持ちを彼女にいった。
「ゼイタク!」
たった一言、カナコはいって、きれいに巻きつけたパスタを口に入れた。
「・・・やっぱり、そ、そうだよね」
あまりにも単純明解、かつ素早い反応にユリはそういうよりほかない。
「・・・でもさぁ、カナはそういう気持ちになったことない?」
あっさり肯定したものの、チョット口惜しかったので、未練顔は出さずに訊いた。
「あるわよ、あたしだって。生身なんだから」
カナコは片頬で笑う。
「そう、やっぱりあるでしょ」
わが意を得たりという思いで、ユリは顔をほころばせる。