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JRタワー「アートボックス2021」選考結果のお知らせ

「アートボックス」は、道内在住・出身のアーティストに新たな発表の場を提供するとともに、パブリックな空間を行き交うお客様にアートを楽しんでいただく目的で、2009年から優秀作品を展示しており、1年間を4期に分け、1作品3カ月間展示しています。
このたび、2021年度に向けた、公募型コンペティション作品2点と活動実績を基にした作家指名のプロポーザルによる作品2点の選考を行い、決定いたしましたので、お知らせします。
作品は、6月から順次JRタワー1階東コンコース「アートボックス」に展示する予定です。

1.作品選定の公募型
(1)優秀賞(賞金:30万円)
受 賞 者:上戸 晶子(うえと しょうこ)  
作 品 名:「鰤」(ぶり)
作品概要:故郷の函館の名物はイカだが、今は、ほとんどとれなくなり、実家の食卓には、鰤が並び、また、昨年の春、日本中から消えたトイレットペーパーは、高額なものでもすぐ売れたが、今は、売り場にひっそりと並んでいる。
日常生活の中で今まで「普通」だったことがいつまでも「普通」であるとは限らないことに着目し、ユーモラスな表現で作品を展示する。

(2)優秀賞(賞金:30万円)
受 賞 者:土井 直也(どい なおや) 
作 品 名:「免疫の入れ物/賢者のロープ」
作品概要:コロナ禍が作品のテーマとなっており、ワクチンに着目し、注射器という布を縫い合わせたオブジェを解体し、そこから生まれた免疫を持った生物(入れ物)とそれを纏う衣服を展示する。
一つの立体から展開される生物が纏う衣服が出来るまでのプロセスを可視化した作品。


2. 作家指名のプロポーザル
(1)作 家 名:相川 みつぐ(あいかわ みつぐ)
作 品 名:「Familiar mountain & the fish doesn’t eat microplastic」
作品概要:数百年前に時代を巻き戻し、緑が深く、草木が生い茂り人工的な建物はなく、動物が食べている魚にはマイクロプラスチップなど含まれていない時代。
現在はそれを含んだ魚を私たちは食べて体内に吸収している。
そんな環境を少しでも考える契機になればと言う思いで作品を展示する。

(2)作 家 名:大橋 鉄郎(おおはし てつろう)
作 品 名:「モデルルーム」
作品概要:あらゆる家具は、テクスチャが貼られ、お洒落さを演出し、床も木を模した印刷である生活の中で、フェイクが当たり前だという感覚が無意識に培われている。
本作品は、ペーパークラフトで制作したテクスチャだけの家財道具で構成し、表層だけの家財道具は、本物を薄く浅いものにしていくことを作品をとおして表現し、すべて原寸大で制作し展示する。


公募作品の2点につきましては、2020年11月1日から2ヶ月の間、募集を行い9件の応募がございました。
様々なジャンルの作品プランから、厳正なる審査の結果、一次審査(書類)において5作品に絞られ、二次審査(プレゼンテーション)により2名の受賞者が決定いたしました。
作家指名のプロポーザルにつきましては、推薦委員より5名の推薦を受け、最終審査で2名が選ばれました。
6月から順次JRタワー1階東コンコース「アートボックス」に作品が展示される予定です。
どうぞご期待ください。


3.審査員講評(一般公募の二次審査)
(1)伊藤 隆介氏 (映像作家/北海道教育大学教授)
今回の応募作の傾向として挙げられるのは、新型コロナに代表される社会の閉塞感や不安について、主題として向き合ったアプローチが少なくなかったことと言えます。
優秀賞に選出された土井直也さんの『免疫の入れ物/賢者のローブ』は、中でもユニークな作品でした。
土井さんはファッションをバックグラウンドとする作家ですが、時代の気分をコマーシャルな形や色彩、素材に投影するのに飽き足らず、服飾を成立させるシステムや工程自体を表現の媒体として、我々の社会や文化を視覚化しようと試みようとしている点が面白かったです。
生産(=商品)に必要な技術を担保しながら、一方で生産の視点からはみ出す部分を発見し、表現に回収していこうという姿勢は、三宅一生さんの生前の数々の実験と表現の広がりを思い出させる部分もあり、大いに期待したいところです。
環境問題が山積し、さらにコロナ禍が個人の生活に追い討ちをかけるような社会状況で、(世間で言う)「癒し」の方法を模索する応募作も多く寄せられました。
そういった真摯な問いかけが、ともすれば茫洋とした感覚的な作品を取るのとは対照的に、優秀賞のShocochiyoさんの作品は知的な批評性が目立っていました。
気候変動という大きな問題意識を、惣菜(イカが減ってブリが増えた)という個人生活の視点に落とし込んだ点に、作家ならではの、語る必然性も感じました。
それがただの風刺や絵解きに陥らず、おおらかさやユーモア感覚を備えたモニュメントとして、通行する人々に働きかける表現(つまりパブリックアート)となりそうな予感があるのは、のびのびとした、的確なドローイングの力でした。
最終審査に残った優れた作家の間で差となったのは、発想やコンセプトの力以上に、それを現実の形にする具体的な造形の能力や、説得力であったという点は記しておきたいと思います。
審査全体を通して、社会状況を反映した作品を多く見られたことは、北海道と、ゆかりの表現者にとって、創作とは単なる審美性のゲームなどではなく、社会や個人の喫緊の状況への関わりの方法や意見表明であるというメッセージを示されたような印象です。
それは頼もしい喜びであり、次回にも期待したいところです。

(2)岡部 昌生氏(美術家)
(歩行者として)
政治の劣化、かぶさるコロナ禍のなか、わたしたち表現者はどう向き合うのか?。
今を生きる姿、伝える使命、それらを考えさせられたこの一年の「今」でした。 
人が往き交い交差する駅の公共空間の定位置にあるARTBOXは、ここから、まさに「今」の、「今」に向き合う表現・思考を発してきました。
アートボックスでの表現は、今日の有り様を映すだけでなく、わたしたちもふくめた表現者の態度もまた、問い問われつづけることだと、今回の審査にそのように向き合ってきました。
それからが時間と思索を重ね、新たな視線に強度をかかえた造形が、どう今を映し応えてくれるのか、歩行者のひとりとしてその成果を受けとめたいと思う。

井越有紀「目覚める、眠る、花が降る」
微かに鼓動するものを、やさしく紡いでくるんで指し示すそのしぐさと表情が、都市の空間にみちていく。
目が触っているように感受する。
ハナやトリと名指しできる固有のカタチからも解き放たれ、合わせた両の手のなかから生まれた無垢なかたちの造形に挑戦するというのはどうでしょう。

岡碧幸「ミラーテスト」
アートボックスのなかに函がある。
鏡やガラスの球体や映像再生装置に映し移され撮られた現在が、瞬時のズレで告知され認知する。
視る、見る、観る、診る、看る、覧ること視タコトが、視ラレテイルと自覚させられ応えるようなアートボックス(が)、視覚の手応えのような「身体装置」のようです。

住田夏美「Holy」
夥しい黄色い線条の集積。
視覚の反応が視ること歩行することから生まれる体験の自覚。
往ったり来たりの身体がつくる「視覚のシカケ」世界の広がり深まりを感受できる心地よさ不思議さ。
錯覚やモアレなど受けとり反応する身体。
それは自身のなかで探求と生成される生命の活動の境界線に触れることでもありましょう。

上戸昌子「鰤」
烏賊の主題が鰤に。
この発見と展開の明るさ親しみにユーモアもあって、ハコのウチにもソトにも歩行のリズムとつながる心地よさ。
リモート審査の語り口が展示プランの線状のリズムと黄色に呼応して、ハコからはみ出し、往来する人の歩行の動線を導きだす。
その軽やかさ、戯れ遊んでみたくなるハコモノですね。

土井直也「免疫の入れ物/賢者のロープ」
コロナ禍の現在を注視させる注射器、布に転写された骨格骨片の身体図、換骨脱体をおもわせる人体像にもみえる生きものと衣服。
なにやら人体解体図が等寸であることでイマのヒトを感じさせ、イキモノをカタドリされた型紙で提示する。
人が往き交う駅空間でどのように構成発信させ受容されるのかと、興味深い。

(3)上遠野 敏氏(札幌市立大学名誉教授)
最終選考に残った5名の方は実力もあり、どの作家も今後の活動を期待できる作家でした。
プレゼンテーションでは ARTBOXの可能性を広げていただけること。
併せて作家として新たな展開を試せる機会となっているのかを中心に審査をさせていただきました。

井越有紀さん
既に評価を得ている作家なので、今後の作品展開も可能性を秘めています。
今回のプレゼン作品はARTBOXに合わせて拡大することを念頭においていましたが、物理的な比率の拡大より概念の拡張を見たかったと思います。
ソフトスカルプチャーとしての位置づけや針仕事特有の形態の出し入れなどの造形の妙を踏まえて、時代性や社会性の反映を期待してします。

岡碧幸さん
メディアアートとして興味深くプレゼンを聞かせていただきました。
今回のプレゼン作品はARTBOXの範疇を大きく逸脱するようなメディアアートではなかったのでクローズドな印象を受けました。
ネットワークはネットをいうインフラを人と人を繋いでワークとなり本来の役目を果たします。
培ってきた国際的な人脈を生かした双方向なメデイアアートの展開など、表現の拡張を大いに期待します。

住田夏美さん
作品の核になる説明の前に関連作品の説明が多かったので、肝心な作品の根幹の輪郭がぼやけてしまったのが惜しまれます。
マケットで制作意図や見え方などを補強されると良いと思います。
併せて、海外留学やレジデンスで吸収したことを最大限に活かして、ビジュアルアートの側面だけではなく、自身の作品の存在証明というようなコンセプチャルな思考も期待されます。

上戸晶子さん
地球温暖化の影響で、北海道の海水温が上昇して秋刀魚やイカが獲れなくなったとの話題はテレビを賑しています。
北国ではほとんど獲れなかった鰤が大量に獲れる不思議さに焦点を当てて作品で問題提起する姿勢は面白いと思います。
独特な画力は魅力的でした。
より社会を映し、未来を映す作品となるように作品との対話を深めて質を高めてください。

土井直也さん
コロナ渦の現在、新型コロナをテーマとする作品は数多あるが、免疫に対する視点と造形性、チャンネルの違い、発想の豊かさや技量的にも目を見張るものがありました。
作品は他に類のない作品展開で大いに可能性を感じました。
今後も独自の展開を進めてとアートの拡張を期待しています。

(4)國松 明日香氏(彫刻家)
今年は応募者の中から5名が2次審査に残り、去る2月10日に応募者によるプレゼンテーションが行われた。
スタッフィングという繊維素材に綿を詰め、縫い合わせて立体に仕上げる技法による作品やディスプレイ(モニター)、鏡などをボックスに並べ、鑑賞者が自身の姿を認識する装置を用い、考える場としてアートボックスを機能させる作品、そして作者が見て欲しいかたちを鑑賞者がある一定の方向からしか見ることが出来ない作品など、それぞれ興味深い作品のプレゼンテーションとなった。
その中で、最終的に選ばれた2作品について私の感想を述べてみたい。
先ず、Shocochiyoさんによる「鰤」と名付けられた作品は、函館出身である作者が故郷で実際に起こっている烏賊の不漁に思いを馳せ、実家に里帰りする度に烏賊に代わって鰤が食卓に上ることから、今まで「普通」だったことがいつまでも「普通」であるとは限らないということに着眼した作品となっている。
今、世界規模で起こっているコロナ禍でもそのことは身近に様々な現象として起きている。
我々にとっても現在進行形で起きている切実な問題であるといえる。
大変重たいテーマをユーモラスな表現で計画されていて魅力的ではあるのだが、このままの表現では鑑賞者に真意が伝わるかいささか疑問に思う。
最終的にアートボックスに展示する前に自身の考えをもっと深め、鑑賞する人たちにコンセプトが十分に伝わる様にブラッシュアップして頂けたらと思う。
次に土井直也さんの「免疫の入れ物/賢者のローブ」は、まさに今国民が1番に関心を寄せているところのコロナ禍が作品のテーマとなっている。
作者は、ホモサピエンスが今日あるのは想像力に長けていたことを挙げている。
共有できる「フィクション」が今こそ必要だとの考えのようである。
そして度重なる世界規模の感染症に打ち勝ってきたワクチンに着眼し、縫い合わせた布でワクチンを投与する注射器をかたちづくり、それを解体したときにできる新たな生物とそれが纏う衣服を展示するというものである。
この作品もShocochiyoさんの作品同様ユーモアに満ちた表現となっている。
布で立体化された注射器が解体され新たな生物と化す様は見応えがある。
「神話」を失った現代の我々に、アートボックスの空間内でどの様な「神話」を提供してくれるのか今から楽しみにしている。
尚、このコロナ禍で横浜市在住のShocochiyoさんは、対面での面接が叶わなかったためon lineでのプレゼンテーションとなった。
来年度は新型コロナ感染症も終息し、全て対面で行われることを切に願う。


◎主催:札幌駅総合開発株式会社
◎協賛:札幌交通機械株式会社、北海道クリーン・システム株式会社、
株式会社JR北海道ソリューションズ、JR北海道駅ビル協議会

問合せ先:札幌駅総合開発株式会社 文化事業部
担当/佐藤・吉岡
TEL:011-209-5075
FAX:011-209-5074
 

 

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